電話機が 1フランで埋もれていたとき

私がバカンスに出かけたとき、ルネに留守をたのんだ。

 

バカンスから帰ると「なにっ」。


入り口にある電話機が、ディズニーランドの宝島のようなありさま。

つまり1フランで埋もれているではないか!


ルネに「これは なにごとだ」と聞くと、ルネは、隣のガルシア家の娘、アニータが、家に電話がないので、何十回、何百回と電話をしにきて、そのつど1フランを置いていったという。

当時、アニータに彼氏ができて、毎日 何回となくその彼に電話して、それで電話機がこんなありさまになったらしい。


ちょうど電話代の請求書が来ていて、おどろいた。

1フランを集めても、この額には達しない。

私は さっそくガルシアに「こりゃひどすぎる」といいにいったが、口数の多いガルシアは、ちょっとあやまったりしたが、なんとなくいいくるめられたといおうか、うやむやで終わってしまった。 


結局、私は 集めた1フランの10倍以上、お金を払うことになった。

ルネは 申し訳なさそうな顔をしていた。


セヴェンヌ地方は こんな「風」が吹くところなのです。

なかのけん:ボンジュール 南仏のヒッピーさん

画家を志すひとりの「サムライ」が、ヒッピーと共に南仏で過ごした10年間の青春の記録。 ヒッピーとの生活を、おもしろおかしく語ります。

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